独極・QRコード担当の「あじな」です。
今回はいよいよ、行列式の計算をやってみましょう!
$$ \begin{pmatrix} 3 & 5 & 2 \\ 1 & 7 & 6 \\ 4 & 8 & 9 \end{pmatrix} $$ 「行列式」を計算する際には「列」に注目します。
まず、1列目の\(\begin{pmatrix} 3 \\ 1 \\ 4 \end{pmatrix}\)の中から「好きな行」の数字を選びます。今回は、2行目の\(1\)を選んだとします。(もちろん、1行目や3行目を選んでも問題ないです)
次に、2列目の\(\begin{pmatrix} 5 \\ 7 \\ 8 \end{pmatrix}\)の中から好きな行の数字を選びます。ただし、1回目で選んだ行(2行目)は選べません。今回は、1行目の\(5\)を選んだとします。
最後に、3列目の\(\begin{pmatrix} 2 \\ 6 \\ 9 \end{pmatrix}\)の中から好きな行の数字を選びます。ただし、1回目で選んだ行(2行目)と2回目で選んだ行(1行目)は選べません。結局、選べるのは3行目なので、\(9\)となります。
次に、選んだ3つの数字(\(1,5,9\))をかけ合わせます。つまり、\(1 \times 5 \times 9 = 45 \)という結果になります。
最後に、このかけ合わせた結果に\(+\)か\(-\)かの符号をつけます。
符号は、これまで選んだ「行」の組み合わせで決まります。今回は、2行目、1行目、3行目を選びましたね。
このとき、(1, 2, 3)という数字の並びから、今回選択した(2, 1, 3)の並びにするには、何回置換が必要かを計算します。これは、「1」と「2」を置換すれば終わりですね。つまり、1回の置換(奇置換)です。
このように、選択した行の並びが元の並びの「奇置換」であれば、選んだ3つの数字を掛け合わせた結果に「\(-\)」をつけます。それなので、今回の場合は「\(-45\)」です。
上記の例では、2行目、1行目、3行目を選びましたが、他にはどのような選び方があるでしょうか。
選び方の総数を考えてみると、1列目では、3つの行から好きなものが選べるので、3パターン。
2列目は、1列目で選択したもの以外の行が選べるので2パターン。最後の3列目では、残った1行しかえらべないので1パターン。
このように考えると、選び方の総数は、\( 3 \times 2 \times 1 = 6 \)となります。
行列式は、この6個のパターン毎に選んだ数字を掛け合わせて、遇置換・奇置換で\(+,-\)の記号を付けて出てきた数字(6個できるはずです)をすべて足し合わせたものになります。
念ため、もう一度、対象の行列を書いておきますね。
$$ \begin{pmatrix} 3 & 5 & 2 \\ 1 & 7 & 6 \\ 4 & 8 & 9 \end{pmatrix} $$ (1,2,3)・・・遇置換 → \( 3 \times 7 \times 9 = 189 \) → 遇置換なので「+」
(1,3,2)・・・奇置換 → \( 3 \times 8 \times 6 = 144 \) → 奇置換なので「-」
(2,1,3)・・・奇置換 → \( 1 \times 5 \times 9 = 45 \) → 奇置換なので「-」
(2,3,1)・・・遇置換 → \( 1 \times 8 \times 2 = 16 \) → 遇置換なので「+」
(3,1,2)・・・遇置換 → \( 4 \times 5 \times 6 = 120 \) → 遇置換なので「+」
(3,2,1)・・・奇置換 → \( 4 \times 7 \times 2 = 56 \) → 奇置換なので「-」
つまり、結局、「行列式」は\(189-144-45+16+120-56 = 80\)となります。
では、次回は3行3列以外の一般的な「行列」の「行列式」の計算方法についてみていきます。
今回はいよいよ、行列式の計算をやってみましょう!
これまでの復習 [表示する]
- QRコードは株式会社デンソーが作ったもので、スマホや携帯で読み取れる
- QRコードは「小さな白と黒の四角でできている」「多少汚れても大丈夫」という特徴がある
- 白黒の四角を使うのは、コンピュータにわかりやすくさせるため
- QRコードは「機能パターン」と「符号化領域」で出来上がっている
- 「機能パターン」は、「クワイエットゾーン」「位置検出パターン」「位置検出パターンの分離パターン」「タイミングパターン」「位置合わせパターン」の5種類
- 「符号化領域」は「形式情報」「型番情報」「データ領域」の3種類
- 「形式情報」は「エラー訂正レベル」と「マスクパターン参照子」で決まり、「\(4 \times 8=32\)」種類のパターンがある
- 「型番情報」は「QRコードのバージョンによって決まり、40種類ある
- 「データ領域」は「データ」と「エラー訂正情報」で出来上がる
- QRコードはバージョンが1〜40まである。一辺の大きさは、「QRコードのバージョン(1〜40)\( \times \)4\( + \)17」
- 「エラー訂正レベル」は「L(7%の汚れまで)」「M(15%の汚れまで)」「Q(25%の汚れまで)」「H(30%の汚れまで)」の4種類ある。
- 「エラー訂正レベル」が「L」だと「QRコード」で表現できるデータの量は最大で、「H」のときに最小になる。
- 「1bit」とは白・黒、1・0のような2種類の情報を表すことができる能力のことで、文字を増やすと「2bit(4種類)」「3bit(8種類)」と表現できる種類が増える
- 日常の言葉を「エンコード」して「コード(符号)」に置き換え、「コード(符号)」を「デコード」して日常の言葉に戻す
- QRコードの「エンコード」方式は「数字モード」「英数字モード」「漢字モード」「8bitモード」の4種類
- どの「エンコード」方式でも、データは「モード指示子」+「文字数指示子」+「データ」+「終端パターン」+「埋め草ビット」+「埋め草ワード」となる
- QRコードには「白」と「黒」を読み間違えても、元の情報を復元する「エラー訂正」能力が備わっている
- 「エラー訂正」は読み取れた(聞き取れた)言葉から最も近い「ありえそうな単語」を推測すること
- 「エラー訂正力が強い」ということは、「あえて使っていない単語が多い」ということと同じで、効率性は悪い
- 1,0でできている符号では「ハミング距離(2つの符号間で1と0が異なる箇所の個数)」があり、符号間で最も「ハミング距離」が小さいものを「最小距離」と呼ぶ
- 使える「単語」を制限すると「最小距離」は大きくなる
- 「最小距離」の半分までのエラーであれば訂正することができる
- 「単語」を「符号化」したものに、適当な「1」や「0」を後ろにつけると「最小距離」が大きい「エラー訂正機能付符号」になる
- 「エラー訂正機能付符号」を作る際は「符号」に「行列(生成行列)」を掛け算する。
- 「QRコード」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれる方法で「エラー訂正機能付符号」を作る
- 「行列」は数字を並べただけのもので、もともとは「連立方程式」の係数だけ抜き取ってならべたもの
- 「行列」の「足し算」「引き算」は各「行列」の要素同士を「足し算」「引き算」したもの
- 「行列」の「掛け算」は、左の「行列」から「行」を取り出し、右の「行列」から「列」を取り出して、それぞれの要素を掛け算して足し合わせる
- 左の「行列」の大きさが「a行b列」で、右の「行列」の大きさが「b行c列」だった時、「掛け算」結果の行列は「a行c列」になる
- 「行列」の「掛け算」は順番を変えると結果も変わる
- 「掛け算」しても結果を変えない行列を「単位行列」と呼び、「掛け算」すると結果が「単位行列」になる行列を「逆行列」と呼ぶ
- 「行列」の特徴を表している「数字」を「行列式」と呼ぶ。「行列式」は「正方行列」だけが持っている
- 「並び替え」は「置換」によってい表すことができ、偶数回の「置換」でできる「並び替え」を「遇置換」、奇数回の「置換」でできる「並び替え」を「奇置換」という
「行列式」の具体的な計算(3行3列の「行列」の場合)
例えば、次のような3行3列の「行列」の「行列式」を計算してみましょう。$$ \begin{pmatrix} 3 & 5 & 2 \\ 1 & 7 & 6 \\ 4 & 8 & 9 \end{pmatrix} $$ 「行列式」を計算する際には「列」に注目します。
まず、1列目の\(\begin{pmatrix} 3 \\ 1 \\ 4 \end{pmatrix}\)の中から「好きな行」の数字を選びます。今回は、2行目の\(1\)を選んだとします。(もちろん、1行目や3行目を選んでも問題ないです)
次に、2列目の\(\begin{pmatrix} 5 \\ 7 \\ 8 \end{pmatrix}\)の中から好きな行の数字を選びます。ただし、1回目で選んだ行(2行目)は選べません。今回は、1行目の\(5\)を選んだとします。
最後に、3列目の\(\begin{pmatrix} 2 \\ 6 \\ 9 \end{pmatrix}\)の中から好きな行の数字を選びます。ただし、1回目で選んだ行(2行目)と2回目で選んだ行(1行目)は選べません。結局、選べるのは3行目なので、\(9\)となります。
次に、選んだ3つの数字(\(1,5,9\))をかけ合わせます。つまり、\(1 \times 5 \times 9 = 45 \)という結果になります。
最後に、このかけ合わせた結果に\(+\)か\(-\)かの符号をつけます。
符号は、これまで選んだ「行」の組み合わせで決まります。今回は、2行目、1行目、3行目を選びましたね。
このとき、(1, 2, 3)という数字の並びから、今回選択した(2, 1, 3)の並びにするには、何回置換が必要かを計算します。これは、「1」と「2」を置換すれば終わりですね。つまり、1回の置換(奇置換)です。
このように、選択した行の並びが元の並びの「奇置換」であれば、選んだ3つの数字を掛け合わせた結果に「\(-\)」をつけます。それなので、今回の場合は「\(-45\)」です。
上記の例では、2行目、1行目、3行目を選びましたが、他にはどのような選び方があるでしょうか。
選び方の総数を考えてみると、1列目では、3つの行から好きなものが選べるので、3パターン。
2列目は、1列目で選択したもの以外の行が選べるので2パターン。最後の3列目では、残った1行しかえらべないので1パターン。
このように考えると、選び方の総数は、\( 3 \times 2 \times 1 = 6 \)となります。
行列式は、この6個のパターン毎に選んだ数字を掛け合わせて、遇置換・奇置換で\(+,-\)の記号を付けて出てきた数字(6個できるはずです)をすべて足し合わせたものになります。
他の組み合わせ
それでは、行の選択方法の6パターンをすべて書いてみましょう。念ため、もう一度、対象の行列を書いておきますね。
$$ \begin{pmatrix} 3 & 5 & 2 \\ 1 & 7 & 6 \\ 4 & 8 & 9 \end{pmatrix} $$ (1,2,3)・・・遇置換 → \( 3 \times 7 \times 9 = 189 \) → 遇置換なので「+」
(1,3,2)・・・奇置換 → \( 3 \times 8 \times 6 = 144 \) → 奇置換なので「-」
(2,1,3)・・・奇置換 → \( 1 \times 5 \times 9 = 45 \) → 奇置換なので「-」
(2,3,1)・・・遇置換 → \( 1 \times 8 \times 2 = 16 \) → 遇置換なので「+」
(3,1,2)・・・遇置換 → \( 4 \times 5 \times 6 = 120 \) → 遇置換なので「+」
(3,2,1)・・・奇置換 → \( 4 \times 7 \times 2 = 56 \) → 奇置換なので「-」
つまり、結局、「行列式」は\(189-144-45+16+120-56 = 80\)となります。
では、次回は3行3列以外の一般的な「行列」の「行列式」の計算方法についてみていきます。