独極・QRコード担当の「あじな」です。
さて、多項式の割り算も解説したことですし、やっとリード・ソロモン符号の作り方を解説することができます!
勢いよくいっちゃいましょう!
次は、リード・ソロモン符号(\(\boldsymbol{X}\))の作り方をみてみましょう。
そもそも、どういう符号の並びなら「これはリード・ソロモン符号だ!」と断言できるのでしょうか?
それは、「検査行列」を掛け算した結果がゼロ行列になるかどうかでしたね。(リード・ソロモン符号になっているかどうかを検査するので、「検査行列」と呼ばれていましたよね)
このことを式で書くとこういうことでしたね。
$$ \boldsymbol{X} \times \boldsymbol{H} = \boldsymbol{0} $$ これを行列の要素でこってりと書いてみましょう。
$$ (x_0,x_1,x_2,\cdots , x_{n-3},x_{n-2},x_{n-1}) \times \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & \cdots & 1 & 1 & 1 \\ 1 & \alpha & \alpha^2 & \cdots & \alpha^{(2t-3)} & \alpha^{(2t-2)} & \alpha^{(2t-1)} \\ 1 & \alpha^2 & \alpha^4 & \cdots & \alpha^{2(2t-3)} & \alpha^{2(2t-2)} & \alpha^{2(2t-1)} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \cdots & \vdots & \vdots & \vdots \\ 1 & \alpha^{(n-3)} & \alpha^{2(n-3)} & \cdots & \alpha^{(n-3)(2t-3)} & \alpha^{(n-3)(2t-2)} & \alpha^{(n-3)(2t-1)} \\ 1 & \alpha^{(n-2)} & \alpha^{2(n-2)} & \cdots & \alpha^{(n-2)(2t-3)} & \alpha^{(n-2)(2t-2)} & \alpha^{(n-2)(2t-1)} \\ 1 & \alpha^{(n-1)} & \alpha^{2(n-1)} & \cdots & \alpha^{(n-1)(2t-3)} & \alpha^{(n-1)(2t-2)} & \alpha^{(n-1)(2t-1)} \\ \end{pmatrix} = \boldsymbol{0} $$ 嫌だとは思いますが、これを展開して書いてみましょうか。
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x_0 &+& x_1 &+& x_2 &+& \cdots &+& x_{n-3} &+& x_{n-2} &+& x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha x_1 &+& \alpha^2 x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(n-3)} x_{n-3} &+& \alpha^{(n-2)} x_{n-2} &+& \alpha^{(n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha^2 x_1 &+& \alpha^4 x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{2(n-3)} x_{n-3} &+& \alpha^{2(n-2)} x_{n-2} &+& \alpha^{(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ \vdots\\ x_0 &+& \alpha^{(2t-3)} x_1 &+& \alpha^{2(2t-3)} x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(2t-3)(n-3)} x_{n-3}&+& \alpha^{(2t-3)(n-2)} x_{n-2}&+& \alpha^{(2t-3)(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha^{(2t-2)} x_1 &+& \alpha^{2(2t-2)} x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(2t-2)(n-3)} x_{n-3}&+& \alpha^{(2t-2)(n-2)} x_{n-2}&+& \alpha^{(2t-2)(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha^{(2t-1)} x_1 &+& \alpha^{2(2t-1)} x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(2t-1)(n-3)} x_{n-3}&+& \alpha^{(2t-1)(n-2)} x_{n-2}&+& \alpha^{(2t-1)(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} $$ さて、この\((2t-1)\)個の方程式ですが、見方によっては次のような方程式に見えませんか?
$$ f(z) = z^0 x_0 + z^1 x_1 + z^2 x_2 + \cdots + z^{(n-3)} x_{(n-3)} + z^{(n-2)} x_{n-2} + z^{(n-1)}x_{(n-1)} = 0 \\ $$ \(f(\alpha^0)=f(1)\)とすると、先ほどの連立方程式の一番上の式ができますし、\(f(\alpha^1)=f(\alpha)\)とすると、2番目の式ができます。
\(f(\alpha^{(2t-1)}\)とすると一番下の方程式ができますね。
\(f(z)\)の\(z\)に\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)を入れると、計算した答えは「0」になります。
ということは、\(f(z)\)は剰余の定理を踏まえると次のように書けるということです。
$$ f(z) = (z-\alpha^0)(z-\alpha^1)(z-\alpha^2) \cdots (z-\alpha^{(2t-3)})(z-\alpha^{(2t-2)})(z-\alpha^{(2t-1)})Q(x) $$ 突然でてきた\(Q(x)\)ってなんやねん!
まぁ、気にしないでください・・・。だって、\(f(z)\)は\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)以外の解をもつ可能性もあって、\(\alpha\)だけで完全に因数分解しきれるかどうかわからないので加えているだけでございます。
先ほどの式は、「\(f(x) = g(x)Q(x)+R(x)\)」という多項式の割り算の観点からみると、\(R(x)\)の部分が「0」なので、\(f(z)\)は\((z-\alpha^0)(z-\alpha^1)(z-\alpha^2) \cdots (z-\alpha^{(2t-3)})(z-\alpha^{(2t-2)})(z-\alpha^{(2t-1)})\)で割り切れるという意味を持ちます。
逆に言えば、\(x_0\)〜\(x_{(n-1)}\)を係数にもつ\(n-1\)次の多項式\(f(z)\)を\((z-\alpha^0)(z-\alpha^1)(z-\alpha^2) \cdots (z-\alpha^{(2t-3)})(z-\alpha^{(2t-2)})(z-\alpha^{(2t-1)})\)で割り切ることができれば、\(f(z)\)は\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)を解に持ち、\(f(z)\)の\(z\)に\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)を代入した際の方程式の結果が0になります。
このことは\(x_0\)〜\(x_{(n-1)}\)にリード・ソロモンの検査行列を掛け算した結果がゼロ行列になることを表しており、\((x_0,x_1,x_2, \cdots ,x_{n-3}, x_{n-2},x_{n-1})\)はリード・ソロモン符号であるといえるのです。
では、適当なメッセージ\((m_0,m_1,m_2, \cdots ,m_{k-3}, m_{k-2},m_{k-1})\)を準備したときに、これはリード・ソロモン符号といえるでしょうか?(\(m\)は5とか10とかいった具体的な数字ですよ!)
たぶん、いえないでしょうね。。。
そもそも、メッセージの長さがリード・ソロモン符号\((x_0,x_1,x_2, \cdots ,x_{n-3}, x_{n-2},x_{n-1})\)は\(n\)桁あるのに対して、メッセージ\((m_0,m_1,m_2, \cdots ,m_{k-3}, m_{k-2},m_{k-1})\)は\(k\)桁になっていますし。。全然ダメじゃん。
いえいえ、ダメでいいんです。というのも、エラー訂正の初めのほうで解説したように、普通はメッセージ符号を作った後に、「生成行列」を掛け算することでエラー訂正機能付き符号に変換するんです。(そうすることで符号間の「最小距離」を広げる役割をもつんでしたね)
では、リード・ソロモン符号に変換するような「生成行列」はなんでしょうか?
実は、リード・ソロモン符号の場合「生成行列」を考えるより便利な方法があるんです。これから、その方法を解説していきますね。
さて、多項式の割り算も解説したことですし、やっとリード・ソロモン符号の作り方を解説することができます!
勢いよくいっちゃいましょう!
これまでの復習 [表示する]
- QRコードは株式会社デンソーが作ったもので、スマホや携帯で読み取れる
- QRコードは「小さな白と黒の四角でできている」「多少汚れても大丈夫」という特徴がある
- 白黒の四角を使うのは、コンピュータにわかりやすくさせるため
- QRコードは「機能パターン」と「符号化領域」で出来上がっている
- 「機能パターン」は、「クワイエットゾーン」「位置検出パターン」「位置検出パターンの分離パターン」「タイミングパターン」「位置合わせパターン」の5種類
- 「符号化領域」は「形式情報」「型番情報」「データ領域」の3種類
- 「形式情報」は「エラー訂正レベル」と「マスクパターン参照子」で決まり、「\(4 \times 8=32\)」種類のパターンがある
- 「型番情報」は「QRコードのバージョンによって決まり、40種類ある
- 「データ領域」は「データ」と「エラー訂正情報」で出来上がる
- QRコードはバージョンが1〜40まである。一辺の大きさは、「QRコードのバージョン(1〜40)\( \times \)4\( + \)17」
- 「エラー訂正レベル」は「L(7%の汚れまで)」「M(15%の汚れまで)」「Q(25%の汚れまで)」「H(30%の汚れまで)」の4種類ある。
- 「エラー訂正レベル」が「L」だと「QRコード」で表現できるデータの量は最大で、「H」のときに最小になる。
- 「1bit」とは白・黒、1・0のような2種類の情報を表すことができる能力のことで、文字を増やすと「2bit(4種類)」「3bit(8種類)」と表現できる種類が増える
- 日常の言葉を「エンコード」して「コード(符号)」に置き換え、「コード(符号)」を「デコード」して日常の言葉に戻す
- QRコードの「エンコード」方式は「数字モード」「英数字モード」「漢字モード」「8bitモード」の4種類
- どの「エンコード」方式でも、データは「モード指示子」+「文字数指示子」+「データ」+「終端パターン」+「埋め草ビット」+「埋め草ワード」となる
- QRコードには「白」と「黒」を読み間違えても、元の情報を復元する「エラー訂正」能力が備わっている
- 「エラー訂正」は読み取れた(聞き取れた)言葉から最も近い「ありえそうな単語」を推測すること
- 「エラー訂正力が強い」ということは、「あえて使っていない単語が多い」ということと同じで、効率性は悪い
- 1,0でできている符号では「ハミング距離(2つの符号間で1と0が異なる箇所の個数)」があり、符号間で最も「ハミング距離」が小さいものを「最小距離」と呼ぶ
- 使える「単語」を制限すると「最小距離」は大きくなる
- 「最小距離」の半分までのエラーであれば訂正することができる
- 「単語」を「符号化」したものに、適当な「1」や「0」を後ろにつけると「最小距離」が大きい「エラー訂正機能付符号」になる
- 「エラー訂正機能付符号」を作る際は「符号」に「行列(生成行列)」を掛け算する。
- 「QRコード」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれる方法で「エラー訂正機能付符号」を作る
- 「行列」は数字を並べただけのもので、もともとは「連立方程式」の係数だけ抜き取ってならべたもの
- 「行列」の「足し算」「引き算」は各「行列」の要素同士を「足し算」「引き算」したもの
- 「行列」の「掛け算」は、左の「行列」から「行」を取り出し、右の「行列」から「列」を取り出して、それぞれの要素を掛け算して足し合わせる
- 左の「行列」の大きさが「a行b列」で、右の「行列」の大きさが「b行c列」だった時、「掛け算」結果の行列は「a行c列」になる
- 「行列」の「掛け算」は順番を変えると結果も変わる
- 「掛け算」しても結果を変えない行列を「単位行列」と呼び、「掛け算」すると結果が「単位行列」になる行列を「逆行列」と呼ぶ
- 「行列」の特徴を表している「数字」を「行列式」と呼ぶ。「行列式」は「正方行列」だけが持っている
- 「並び替え」は「置換」によってい表すことができ、偶数回の「置換」でできる「並び替え」を「遇置換」、奇数回の「置換」でできる「並び替え」を「奇置換」という
- 「行列式」は各列から数字を選択し「掛け算」し、符号をつけた(「遇置換→(+)」「奇置換→(-)」たものを全ての選択パターンで足し合わせる。
- 「列」で計算しても、「行」で計算しても結果は同じ
- 「全てが0の列」、もしくは、「すべてが0の行」があれば「行列式」は「0」
- 「列」を入れ替えたら「行列式」の符号が変わる。「行」を入れ替えても「行列式」の符号が変わる。
- 全く同じ「行」が2個以上あれば「行列式」は「0」。全く同じ「列」が2個以上あっても「行列式」は「0」
- ある「行列」の「行列式」は、その「行列」の1つの「列」(もしくは「行」)を2つに分割して、2つの「行列」の「行列式」の「足し算」にすることができる
- ある「行」に違う「行」を「足し引き」しても、「行列式」の結果は変わらない。ある「列」に違う「列」を「足し引き」しても、「行列式」の結果は変わらない。
- ある「行(もしくは列)」を「定数倍」した「行列」の「行列式」は、「定数倍」する前の「行列」の「行列式」に定数をかけたものと同じ
- 2つの「行列」を「掛け算」した結果の「行列」の「行列式」と、それぞれの「行列」の「行列式」を「掛け算」した結果は同じ((\ \left| \mathb{A} \times \mathb{B} \right| = \left| \mathb{A} \right| \times \left| \mathb{B} \right| \))
- 「連立方程式」の係数を抜き出した「行列」の「行列式」の値が「0」になるということは、元の「連立方程式」が「不良設定問題」である
- 「逆行列」は「正方行列」かつ「行列式」の値が「0」でない「行列」だけに存在する
- 「\((-1)^{(i+j)} \times (元の行列からi行目とj列目を取り去った行列) \)」を「余因子行列」と呼ぶ
- 「行列式」は「余因子展開」を使うと、1サイズ小さい「行列」の「行列式」の「足し算」に展開することができる
- 「逆行列」は「(元の「行列」の「行列式」の逆数)\(\times\)(x行・y列目の要素が<元の行列のy行・x列目を取り除いた「余因子行列」の「行列式」>となる「行列」)」
- 「階段行列」は上の行から、左側(0の部分を除きます)を1にして、その行より下の行の左側が0になるように適当な数字をかけて足し算・引き算するというのを繰り返して作る
- 「ランク」はその「行列」の中の独立した行(または列)の数で、「連立方程式」の係数を「行列」にした場合、未知数の数より「ランク」が低ければ「不良設定問題」となる
- 「符号」のサイズが1行n列、「エラー訂正付符号」のサイズが1行m列のとき、「生成行列」はn行m列になる
- 「QRコード」で利用される「エラー訂正機能付符号」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれるもの
- 「検査行列」を「エラー訂正機能付符号」に「掛け算」すると結果は「ゼロ行列」になる。逆に「ゼロ行列」にならないと、読み取った「エラー訂正機能付符号」が間違っている
- エラー訂正機能のスペックは「n(「エラー訂正機能付符号」の「長さ」)」、「k(実質的に単語を表現する桁数)」、「d(「エラー訂正機能付符号」の間の「最小距離」)」の3つ
- エラー訂正機能のスペックの「n(「エラー訂正機能付符号」の「長さ」)」は「検査行列」の行数と同じ
- エラー訂正機能のスペックの「k(「実質的に単語を表現する桁数)」は「検査行列」をn行m列だとすると、「n-(検査行列のランク)」となる
- 同じ仲間の「エラー訂正機能付符号」を2つ用意すると、それらを「引き算」した結果も同じ仲間の「エラー訂正機能付符号」の1つになる
- 「エラー訂正機能付符号」軍団の中の「最小距離」は、その「エラー訂正機能付符号」軍団の中で最も小さい「ハミング重み」と同じになる
- エラー訂正機能のスペックの「d(「エラー訂正機能付符号」の間の「最小距離」)」は「(「検査行列」の「ランク」)+1」以上となる
- 「シングルトン限界式」は「d(「エラー訂正機能付符号」の間の「最小距離」)」が「n(「エラー訂正機能付符号」の「長さ」)-k(実質的に単語を表現する桁数)+1」以下になること
- リード・ソロモンの「検査行列」は、x行y列の要素が\(\alpha^{(x-1)(y-1)}\)で、xはn行まで、yは2t列までの「行列」
- リード・ソロモンの「検査行列」のランクは2t
- リード・ソロモンの「検査行列」の特徴は、「エラー訂正機能付符号」の「長さ」はn、実質的に単語を表現する桁数)はn-2t、「エラー訂正機能付符号」の間の「最小距離」は2t+1
- 「ヴァンデルモンド行列」の行列式は、行列の要素に同じ値のものがなければ「0」にはならない。
- 受信符号に検査行列を掛け算した結果は、発生したエラーに検査行列を掛けたものと同じになる、「\(\boldsymbol{Y} \times \boldsymbol{H} = \boldsymbol{E} \times \boldsymbol{H}\)」
- 「\(\boldsymbol{Y} \times \boldsymbol{H} = \boldsymbol{E} \times \boldsymbol{H}\)」を展開すると、方程式の数がn個、未知数が2t個の連立方程式になる
- リード・ソロモン符号の解き方は、「01.エラーの発生個数」「02.エラーの発生位置」「03.エラーの内容」の3ステップ
- \(\begin{vmatrix} S_0 & S_1 & \ldots & S_{j-1} \\ S_1 & S_2 & \ldots & S_{j} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ S_{j-1} & S_{j} & \ldots & S_{ 2j-2 } \\ \end{vmatrix}\)という行列式の\(j\)の値を\(t\)から1つずつ減らしていき、初めて行列式の値が「0」以外になった時の\(j\)がエラーの発生個数になる。
- エラーが発生している位置に対応する\(\alpha\)の「逆数」(つまり、\(\alpha^{-p_0},\alpha^{-p_1},\cdots ,\alpha^{-p_{j-2}},\alpha^{-p_{j-1}}\)を入力したときだけ「0]を出力する関数を、\(\boldsymbol{Y} \)と\(\boldsymbol{H}\)の情報から作ることができ、エラーの位置を求めることができる
- エラーの位置が分かった状態であれば、元の「\(\boldsymbol{Y} \times \boldsymbol{H} = \boldsymbol{E} \times \boldsymbol{H}\)」を普通の連立方程式のように解くことができ、「エラーの内容」を求めることができる
- 多項式を多項式で割り算することができ、割り算した商を\(Q(x)\)、余りを\(R(x)\)とすると、「\(f(x) = g(x)Q(x) + R(x)\)」と書ける
- 次数が\(f\)の多項式を次数が\(g\)の多項式で割り算すると余りの多項式の次数は\(g\)未満になる
- 多項式\(f(x)\)の解(\(f(a)=0\)となる\(a\)の値)を使うと、\(f(x)=(x-a)R(x)\)と因数分解できる(剰余の定理)
- 多項式\(f(x)\)は\(f(x) = (x-a_1)(x-a_2)(x-a_3) \cdots (x-a_{(n-2)})(x-a_{(n-1)})(x-a_{n})\)と因数分解できる(ただし、\(a\)は複素数になることもある)
リード・ソロモン符号ってどうやって作ったらよいの?
さて、これまでの解説で、リード・ソロモン符号(\(\boldsymbol{Y}\))を受信した際に、検査行列(\(\boldsymbol{H}\))を使って送信符号(\(\boldsymbol{X}\))を復元する方法を解説してきました。次は、リード・ソロモン符号(\(\boldsymbol{X}\))の作り方をみてみましょう。
そもそも、どういう符号の並びなら「これはリード・ソロモン符号だ!」と断言できるのでしょうか?
それは、「検査行列」を掛け算した結果がゼロ行列になるかどうかでしたね。(リード・ソロモン符号になっているかどうかを検査するので、「検査行列」と呼ばれていましたよね)
このことを式で書くとこういうことでしたね。
$$ \boldsymbol{X} \times \boldsymbol{H} = \boldsymbol{0} $$ これを行列の要素でこってりと書いてみましょう。
$$ (x_0,x_1,x_2,\cdots , x_{n-3},x_{n-2},x_{n-1}) \times \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 & \cdots & 1 & 1 & 1 \\ 1 & \alpha & \alpha^2 & \cdots & \alpha^{(2t-3)} & \alpha^{(2t-2)} & \alpha^{(2t-1)} \\ 1 & \alpha^2 & \alpha^4 & \cdots & \alpha^{2(2t-3)} & \alpha^{2(2t-2)} & \alpha^{2(2t-1)} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \cdots & \vdots & \vdots & \vdots \\ 1 & \alpha^{(n-3)} & \alpha^{2(n-3)} & \cdots & \alpha^{(n-3)(2t-3)} & \alpha^{(n-3)(2t-2)} & \alpha^{(n-3)(2t-1)} \\ 1 & \alpha^{(n-2)} & \alpha^{2(n-2)} & \cdots & \alpha^{(n-2)(2t-3)} & \alpha^{(n-2)(2t-2)} & \alpha^{(n-2)(2t-1)} \\ 1 & \alpha^{(n-1)} & \alpha^{2(n-1)} & \cdots & \alpha^{(n-1)(2t-3)} & \alpha^{(n-1)(2t-2)} & \alpha^{(n-1)(2t-1)} \\ \end{pmatrix} = \boldsymbol{0} $$ 嫌だとは思いますが、これを展開して書いてみましょうか。
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x_0 &+& x_1 &+& x_2 &+& \cdots &+& x_{n-3} &+& x_{n-2} &+& x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha x_1 &+& \alpha^2 x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(n-3)} x_{n-3} &+& \alpha^{(n-2)} x_{n-2} &+& \alpha^{(n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha^2 x_1 &+& \alpha^4 x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{2(n-3)} x_{n-3} &+& \alpha^{2(n-2)} x_{n-2} &+& \alpha^{(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ \vdots\\ x_0 &+& \alpha^{(2t-3)} x_1 &+& \alpha^{2(2t-3)} x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(2t-3)(n-3)} x_{n-3}&+& \alpha^{(2t-3)(n-2)} x_{n-2}&+& \alpha^{(2t-3)(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha^{(2t-2)} x_1 &+& \alpha^{2(2t-2)} x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(2t-2)(n-3)} x_{n-3}&+& \alpha^{(2t-2)(n-2)} x_{n-2}&+& \alpha^{(2t-2)(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ x_0 &+& \alpha^{(2t-1)} x_1 &+& \alpha^{2(2t-1)} x_2 &+& \cdots &+& \alpha^{(2t-1)(n-3)} x_{n-3}&+& \alpha^{(2t-1)(n-2)} x_{n-2}&+& \alpha^{(2t-1)(2n-1)}x_{n-1} &=& 0 \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} $$ さて、この\((2t-1)\)個の方程式ですが、見方によっては次のような方程式に見えませんか?
$$ f(z) = z^0 x_0 + z^1 x_1 + z^2 x_2 + \cdots + z^{(n-3)} x_{(n-3)} + z^{(n-2)} x_{n-2} + z^{(n-1)}x_{(n-1)} = 0 \\ $$ \(f(\alpha^0)=f(1)\)とすると、先ほどの連立方程式の一番上の式ができますし、\(f(\alpha^1)=f(\alpha)\)とすると、2番目の式ができます。
\(f(\alpha^{(2t-1)}\)とすると一番下の方程式ができますね。
\(f(z)\)の\(z\)に\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)を入れると、計算した答えは「0」になります。
ということは、\(f(z)\)は剰余の定理を踏まえると次のように書けるということです。
$$ f(z) = (z-\alpha^0)(z-\alpha^1)(z-\alpha^2) \cdots (z-\alpha^{(2t-3)})(z-\alpha^{(2t-2)})(z-\alpha^{(2t-1)})Q(x) $$ 突然でてきた\(Q(x)\)ってなんやねん!
まぁ、気にしないでください・・・。だって、\(f(z)\)は\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)以外の解をもつ可能性もあって、\(\alpha\)だけで完全に因数分解しきれるかどうかわからないので加えているだけでございます。
先ほどの式は、「\(f(x) = g(x)Q(x)+R(x)\)」という多項式の割り算の観点からみると、\(R(x)\)の部分が「0」なので、\(f(z)\)は\((z-\alpha^0)(z-\alpha^1)(z-\alpha^2) \cdots (z-\alpha^{(2t-3)})(z-\alpha^{(2t-2)})(z-\alpha^{(2t-1)})\)で割り切れるという意味を持ちます。
逆に言えば、\(x_0\)〜\(x_{(n-1)}\)を係数にもつ\(n-1\)次の多項式\(f(z)\)を\((z-\alpha^0)(z-\alpha^1)(z-\alpha^2) \cdots (z-\alpha^{(2t-3)})(z-\alpha^{(2t-2)})(z-\alpha^{(2t-1)})\)で割り切ることができれば、\(f(z)\)は\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)を解に持ち、\(f(z)\)の\(z\)に\(\alpha^0, \alpha^1, \alpha^2, \cdots , \alpha^{(2t-3)}, \alpha^{(2t-2)}, \alpha^{(2t-1)}\)を代入した際の方程式の結果が0になります。
このことは\(x_0\)〜\(x_{(n-1)}\)にリード・ソロモンの検査行列を掛け算した結果がゼロ行列になることを表しており、\((x_0,x_1,x_2, \cdots ,x_{n-3}, x_{n-2},x_{n-1})\)はリード・ソロモン符号であるといえるのです。
では、適当なメッセージ\((m_0,m_1,m_2, \cdots ,m_{k-3}, m_{k-2},m_{k-1})\)を準備したときに、これはリード・ソロモン符号といえるでしょうか?(\(m\)は5とか10とかいった具体的な数字ですよ!)
たぶん、いえないでしょうね。。。
そもそも、メッセージの長さがリード・ソロモン符号\((x_0,x_1,x_2, \cdots ,x_{n-3}, x_{n-2},x_{n-1})\)は\(n\)桁あるのに対して、メッセージ\((m_0,m_1,m_2, \cdots ,m_{k-3}, m_{k-2},m_{k-1})\)は\(k\)桁になっていますし。。全然ダメじゃん。
いえいえ、ダメでいいんです。というのも、エラー訂正の初めのほうで解説したように、普通はメッセージ符号を作った後に、「生成行列」を掛け算することでエラー訂正機能付き符号に変換するんです。(そうすることで符号間の「最小距離」を広げる役割をもつんでしたね)
では、リード・ソロモン符号に変換するような「生成行列」はなんでしょうか?
実は、リード・ソロモン符号の場合「生成行列」を考えるより便利な方法があるんです。これから、その方法を解説していきますね。