独極・QRコード担当の「あじな」です。
「検査行列」を決めると、いろんなエラー訂正のスペックが決まることを見てきました。
これは!という「検査行列」を見つけるのは、難しそうですが、宝探し見たいでなんだか楽しそうですね。
皆さん、「検査行列」の「ランク」という言葉を覚えていますか?
そう。「検査行列」の各行を「足し」「引き」しながら「階段行列」を作った結果、全ての行の要素が「0」ではない行の数のことを「ランク」というのでした。
例えば、「ランク」が3の「行列」の場合、どんなにその「行列」の行を工夫してに「足し」「引き」しても3つの行だけはすべての要素を0にすることはできないものでした。
トツゼンナニヲイッテイルノダネ
まぁまぁ、もうちょっと聞いてくださいな。って、なんでカタカナ・・・
話をもとに戻して、「検査行列」と「エラー訂正機能付符号」の「最小距離」関係の話をしましょう。
これまで何度も出てきている、「エラー訂正機能付符号」と「検査行列」の関係をもう一度書きます。
$$ \begin{pmatrix} w_{1} & w_{2} & w_{3} & \cdots & w_{n-2} & w_{n-1} & w_{n} \end{pmatrix} \times \begin{pmatrix} a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \cdots & a_{1,m-2} & a_{1,m-1} & a_{1,m}\\ a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \cdots & a_{2,m-2} & a_{2,m-1} & a_{2,m}\\ a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \cdots & a_{3,m-2} & a_{3,m-1} & a_{3,m}\\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots & \vdots & \vdots\\ a_{n-2,1} & a_{n-2,2} & a_{n-2,3} & \cdots & a_{n-2,m-2} & a_{n-2,m-1} & a_{n-2,m}\\ a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & a_{n-1,3} & \cdots & a_{n-1,m-2} & a_{n-1,m-1} & a_{n-1,m}\\ a_{n,1} & a_{n,2} & a_{n,3} & \cdots & a_{n,m-2} & a_{n,m-1} & a_{n,m}\\ \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 & \cdots & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} $$ 相変わらず見るのもいやな式ですが、この「掛け算」の中身を見てみると、「検査行列」の1行目を\(w_{1}\)倍したものと、2行目を\(w_{2}\)倍したものと、・・・・、n行目を\(w_{n}\)倍したものを「足し合わせる」ようになっています。式で書くとこんな感じ。です。
$$ w_{1} \cdot \begin{pmatrix} a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \cdots & a_{1,m-2} & a_{1,m-1} & a_{1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{2} \cdot \begin{pmatrix} a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \cdots & a_{2,m-2} & a_{2,m-1} & a_{2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{3} \cdot \begin{pmatrix} a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \cdots & a_{3,m-2} & a_{3,m-1} & a_{3,m} \end{pmatrix} + \\ \quad \vdots \\ \quad w_{n-2} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-2,1} & a_{n-2,2} & a_{n-2,3} & \cdots & a_{n-2,m-2} & a_{n-2,m-1} & a_{n-2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n-1} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & a_{n-1,3} & \cdots & a_{n-1,m-2} & a_{n-1,m-1} & a_{n-1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n} \cdot \begin{pmatrix} a_{n,1} & a_{n,2} & a_{n,3} & \cdots & a_{n,m-2} & a_{n,m-1} & a_{n,m} \end{pmatrix} \\ = \\ \begin{pmatrix} 0_{1} & 0_{2} & 0_{3} & \cdots & 0_{m-2} & 0_{m-1} & 0_{m} \end{pmatrix} $$ さて、ここで「ランク」の話がでてきます。
もし、この「検査行列」の「ランク」が10だったとすると、この「検査行列」のある10個の行を使ってほかの行から「足し」「引き」すると、他の行の要素を「すべて0」にすることができるのでしたよね。式で書くとこんな感じです。
$$ (検査行列のターゲットとなる行) + a \cdot (検査行列のある行その1) + b \cdot (検査行列のある行その2) + c \cdot (検査行列のある行その3) + \\ \quad d \cdot (検査行列のある行その4) + e \cdot (検査行列のある行その5) + f \cdot (検査行列のある行その6) + \\ \quad g \cdot (検査行列のある行その7) + h \cdot (検査行列のある行その8) + i \cdot (検査行列のある行その9) + \\ \quad j \cdot (検査行列のある行その10) =(要素がすべて0の行) $$ この式をじっくり見ると、「検査行列」の行を上手に11個選んで、各行に適当な数字をかけて足すと、要素がすべて0の行になるということを表していますよね。
それでは、「検査行列」の行からうまい具合に「10」個を選んで同じようなことができるでしょうか?
できないですよね。
それは、「検査行列」の「ランク」が「10」だったので、ある行を0にするためには最低10個の行が必要でした。つまり、ある行とそのほかの10個の行をあわせて、11個の行がないと要素がすべて「0」の行を作り出すことができませんでした。
ダカラドウシタ!!??
だから、カタカナで怒らないでくださいって・・・。不気味です。
ここで、もう一度先ほどの「エラー訂正機能付符号」と「検査行列」の関係を展開したものを書きますね。
$$ w_{1} \cdot \begin{pmatrix} a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \cdots & a_{1,m-2} & a_{1,m-1} & a_{1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{2} \cdot \begin{pmatrix} a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \cdots & a_{2,m-2} & a_{2,m-1} & a_{2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{3} \cdot \begin{pmatrix} a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \cdots & a_{3,m-2} & a_{3,m-1} & a_{3,m} \end{pmatrix} + \\ \quad \vdots \\ \quad w_{n-2} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-2,1} & a_{n-2,2} & a_{n-2,3} & \cdots & a_{n-2,m-2} & a_{n-2,m-1} & a_{n-2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n-1} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & a_{n-1,3} & \cdots & a_{n-1,m-2} & a_{n-1,m-1} & a_{n-1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n} \cdot \begin{pmatrix} a_{n,1} & a_{n,2} & a_{n,3} & \cdots & a_{n,m-2} & a_{n,m-1} & a_{n,m} \end{pmatrix} \\ = \\ \begin{pmatrix} 0_{1} & 0_{2} & 0_{3} & \cdots & 0_{m-2} & 0_{m-1} & 0_{m} \end{pmatrix} $$ この式の右辺は要素がすべて「0」の行となっていますが、この行を作り出すために左辺の\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)のn個の数字は最低何個以上「0」以外の数字になる必要があるのでしょうか?
先ほど見てきたように、「検査行列」のランクが10なのであれば、必ず11個以上の行を組み合わせないと要素がすべて「0」の行を作ることはできませんでしたね。
つまり、\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)のうち最低11個以上は「0」以外の数字じゃないといけないのです。
おっ!?ということは??
そうです。\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)のうち、最低11個以上は0以外の数字ということは、この「エラー訂正機能付符号」の「ハミング重み」は「11以上」なのです。
言い方を変える、この「エラー訂正機能付符号」の中で最も小さいハミング重みは「11以上」になります。
ちなみに、ぴったし「11個」と言い切れないのは、11個ですべての要素が「0」の行を作ろうとすると、「検査行列」から上手にある特定の11個を選ぶように\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)を丁寧に決めなければいけません。でも、もしかしたら、その丁寧に選んだ\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)は「エラー訂正機能付符号」として採用されてないものである可能性もあります。
例えば、「エラー訂正機能付符号」として「00」「01」「10」「11」が許されていたとしても、「今回の符号では3種類の文字しか表さないから「00」は「エラー訂正機能付符号」として採用しない」と決めることもできます。だから「11個以上」という言い方になってしまうのです。
おっ!?おっ!?そして、そして??
ノリがよくなってきましたね。
「エラー訂正機能付符号」の中で最も小さい「ハミング重」みは、その「エラー訂正機能付符号」の中での「最小距離」を表しているのでした。
ということは、つまり、この「検査行列」からできる「エラー訂正機能付符号」の「最小距離」は「11」以上ということが言えるのです!!
パンパカパーン!ついにゴールにたどり着きました!!
長い道のりでしたね。。。
検査行列のランクが「t」だとすると、最小距離「d」は「t+1」以上になることがわかりました。
今回の解説で、最小距離「d」は「t+1」以上ということがわかりましたが、次回は、最小距離「d」が○○以下になるといえるのか見ていきましょう。
「検査行列」を決めると、いろんなエラー訂正のスペックが決まることを見てきました。
これは!という「検査行列」を見つけるのは、難しそうですが、宝探し見たいでなんだか楽しそうですね。
これまでの復習 [表示する]
- QRコードは株式会社デンソーが作ったもので、スマホや携帯で読み取れる
- QRコードは「小さな白と黒の四角でできている」「多少汚れても大丈夫」という特徴がある
- 白黒の四角を使うのは、コンピュータにわかりやすくさせるため
- QRコードは「機能パターン」と「符号化領域」で出来上がっている
- 「機能パターン」は、「クワイエットゾーン」「位置検出パターン」「位置検出パターンの分離パターン」「タイミングパターン」「位置合わせパターン」の5種類
- 「符号化領域」は「形式情報」「型番情報」「データ領域」の3種類
- 「形式情報」は「エラー訂正レベル」と「マスクパターン参照子」で決まり、「\(4 \times 8=32\)」種類のパターンがある
- 「型番情報」は「QRコードのバージョンによって決まり、40種類ある
- 「データ領域」は「データ」と「エラー訂正情報」で出来上がる
- QRコードはバージョンが1〜40まである。一辺の大きさは、「QRコードのバージョン(1〜40)\( \times \)4\( + \)17」
- 「エラー訂正レベル」は「L(7%の汚れまで)」「M(15%の汚れまで)」「Q(25%の汚れまで)」「H(30%の汚れまで)」の4種類ある。
- 「エラー訂正レベル」が「L」だと「QRコード」で表現できるデータの量は最大で、「H」のときに最小になる。
- 「1bit」とは白・黒、1・0のような2種類の情報を表すことができる能力のことで、文字を増やすと「2bit(4種類)」「3bit(8種類)」と表現できる種類が増える
- 日常の言葉を「エンコード」して「コード(符号)」に置き換え、「コード(符号)」を「デコード」して日常の言葉に戻す
- QRコードの「エンコード」方式は「数字モード」「英数字モード」「漢字モード」「8bitモード」の4種類
- どの「エンコード」方式でも、データは「モード指示子」+「文字数指示子」+「データ」+「終端パターン」+「埋め草ビット」+「埋め草ワード」となる
- QRコードには「白」と「黒」を読み間違えても、元の情報を復元する「エラー訂正」能力が備わっている
- 「エラー訂正」は読み取れた(聞き取れた)言葉から最も近い「ありえそうな単語」を推測すること
- 「エラー訂正力が強い」ということは、「あえて使っていない単語が多い」ということと同じで、効率性は悪い
- 1,0でできている符号では「ハミング距離(2つの符号間で1と0が異なる箇所の個数)」があり、符号間で最も「ハミング距離」が小さいものを「最小距離」と呼ぶ
- 使える「単語」を制限すると「最小距離」は大きくなる
- 「最小距離」の半分までのエラーであれば訂正することができる
- 「単語」を「符号化」したものに、適当な「1」や「0」を後ろにつけると「最小距離」が大きい「エラー訂正機能付符号」になる
- 「エラー訂正機能付符号」を作る際は「符号」に「行列(生成行列)」を掛け算する。
- 「QRコード」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれる方法で「エラー訂正機能付符号」を作る
- 「行列」は数字を並べただけのもので、もともとは「連立方程式」の係数だけ抜き取ってならべたもの
- 「行列」の「足し算」「引き算」は各「行列」の要素同士を「足し算」「引き算」したもの
- 「行列」の「掛け算」は、左の「行列」から「行」を取り出し、右の「行列」から「列」を取り出して、それぞれの要素を掛け算して足し合わせる
- 左の「行列」の大きさが「a行b列」で、右の「行列」の大きさが「b行c列」だった時、「掛け算」結果の行列は「a行c列」になる
- 「行列」の「掛け算」は順番を変えると結果も変わる
- 「掛け算」しても結果を変えない行列を「単位行列」と呼び、「掛け算」すると結果が「単位行列」になる行列を「逆行列」と呼ぶ
- 「行列」の特徴を表している「数字」を「行列式」と呼ぶ。「行列式」は「正方行列」だけが持っている
- 「並び替え」は「置換」によってい表すことができ、偶数回の「置換」でできる「並び替え」を「遇置換」、奇数回の「置換」でできる「並び替え」を「奇置換」という
- 「行列式」は各列から数字を選択し「掛け算」し、符号をつけた(「遇置換→(+)」「奇置換→(-)」たものを全ての選択パターンで足し合わせる。
- 「列」で計算しても、「行」で計算しても結果は同じ
- 「全てが0の列」、もしくは、「すべてが0の行」があれば「行列式」は「0」
- 「列」を入れ替えたら「行列式」の符号が変わる。「行」を入れ替えても「行列式」の符号が変わる。
- 全く同じ「行」が2個以上あれば「行列式」は「0」。全く同じ「列」が2個以上あっても「行列式」は「0」
- ある「行列」の「行列式」は、その「行列」の1つの「列」(もしくは「行」)を2つに分割して、2つの「行列」の「行列式」の「足し算」にすることができる
- ある「行」に違う「行」を「足し引き」しても、「行列式」の結果は変わらない。ある「列」に違う「列」を「足し引き」しても、「行列式」の結果は変わらない。
- ある「行(もしくは列)」を「定数倍」した「行列」の「行列式」は、「定数倍」する前の「行列」の「行列式」に定数をかけたものと同じ
- 2つの「行列」を「掛け算」した結果の「行列」の「行列式」と、それぞれの「行列」の「行列式」を「掛け算」した結果は同じ((\ \left| \mathb{A} \times \mathb{B} \right| = \left| \mathb{A} \right| \times \left| \mathb{B} \right| \))
- 「連立方程式」の係数を抜き出した「行列」の「行列式」の値が「0」になるということは、元の「連立方程式」が「不良設定問題」である
- 「逆行列」は「正方行列」かつ「行列式」の値が「0」でない「行列」だけに存在する
- 「\((-1)^{(i+j)} \times (元の行列からi行目とj列目を取り去った行列) \)」を「余因子行列」と呼ぶ
- 「行列式」は「余因子展開」を使うと、1サイズ小さい「行列」の「行列式」の「足し算」に展開することができる
- 「逆行列」は「(元の「行列」の「行列式」の逆数)\(\times\)(x行・y列目の要素が<元の行列のy行・x列目を取り除いた「余因子行列」の「行列式」>となる「行列」)」
- 「階段行列」は上の行から、左側(0の部分を除きます)を1にして、その行より下の行の左側が0になるように適当な数字をかけて足し算・引き算するというのを繰り返して作る
- 「ランク」はその「行列」の中の独立した行(または列)の数で、「連立方程式」の係数を「行列」にした場合、未知数の数より「ランク」が低ければ「不良設定問題」となる
- 「符号」のサイズが1行n列、「エラー訂正付符号」のサイズが1行m列のとき、「生成行列」はn行m列になる
- 「QRコード」で利用される「エラー訂正機能付符号」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれるもの
- 「検査行列」を「エラー訂正機能付符号」に「掛け算」すると結果は「ゼロ行列」になる。逆に「ゼロ行列」にならないと、読み取った「エラー訂正機能付符号」が間違っている
- エラー訂正機能のスペックは「n(「エラー訂正機能付符号」の「長さ」)」、「k(実質的に単語を表現する桁数)」、「d(「エラー訂正機能付符号」の間の「最小距離」)」の3つ
- エラー訂正機能のスペックの「n(「エラー訂正機能付符号」の「長さ」)」は「検査行列」の行数と同じ
- エラー訂正機能のスペックの「k(「実質的に単語を表現する桁数)」は「検査行列」をn行m列だとすると、「n-(検査行列のランク)」となる
- 同じ仲間の「エラー訂正機能付符号」を2つ用意すると、それらを「引き算」した結果も同じ仲間の「エラー訂正機能付符号」の1つになる
- 「エラー訂正機能付符号」軍団の中の「最小距離」は、その「エラー訂正機能付符号」軍団の中で最も小さい「ハミング重み」と同じになる
最も重みが小さい符号と検査行列との関係
さて、「検査行列」と「エラー訂正機能付符号」の間の「最小距離」(d)の関係について見ていきましょう。皆さん、「検査行列」の「ランク」という言葉を覚えていますか?
そう。「検査行列」の各行を「足し」「引き」しながら「階段行列」を作った結果、全ての行の要素が「0」ではない行の数のことを「ランク」というのでした。
例えば、「ランク」が3の「行列」の場合、どんなにその「行列」の行を工夫してに「足し」「引き」しても3つの行だけはすべての要素を0にすることはできないものでした。
トツゼンナニヲイッテイルノダネ
まぁまぁ、もうちょっと聞いてくださいな。って、なんでカタカナ・・・
話をもとに戻して、「検査行列」と「エラー訂正機能付符号」の「最小距離」関係の話をしましょう。
これまで何度も出てきている、「エラー訂正機能付符号」と「検査行列」の関係をもう一度書きます。
$$ \begin{pmatrix} w_{1} & w_{2} & w_{3} & \cdots & w_{n-2} & w_{n-1} & w_{n} \end{pmatrix} \times \begin{pmatrix} a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \cdots & a_{1,m-2} & a_{1,m-1} & a_{1,m}\\ a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \cdots & a_{2,m-2} & a_{2,m-1} & a_{2,m}\\ a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \cdots & a_{3,m-2} & a_{3,m-1} & a_{3,m}\\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots & \vdots & \vdots\\ a_{n-2,1} & a_{n-2,2} & a_{n-2,3} & \cdots & a_{n-2,m-2} & a_{n-2,m-1} & a_{n-2,m}\\ a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & a_{n-1,3} & \cdots & a_{n-1,m-2} & a_{n-1,m-1} & a_{n-1,m}\\ a_{n,1} & a_{n,2} & a_{n,3} & \cdots & a_{n,m-2} & a_{n,m-1} & a_{n,m}\\ \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 & \cdots & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} $$ 相変わらず見るのもいやな式ですが、この「掛け算」の中身を見てみると、「検査行列」の1行目を\(w_{1}\)倍したものと、2行目を\(w_{2}\)倍したものと、・・・・、n行目を\(w_{n}\)倍したものを「足し合わせる」ようになっています。式で書くとこんな感じ。です。
$$ w_{1} \cdot \begin{pmatrix} a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \cdots & a_{1,m-2} & a_{1,m-1} & a_{1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{2} \cdot \begin{pmatrix} a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \cdots & a_{2,m-2} & a_{2,m-1} & a_{2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{3} \cdot \begin{pmatrix} a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \cdots & a_{3,m-2} & a_{3,m-1} & a_{3,m} \end{pmatrix} + \\ \quad \vdots \\ \quad w_{n-2} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-2,1} & a_{n-2,2} & a_{n-2,3} & \cdots & a_{n-2,m-2} & a_{n-2,m-1} & a_{n-2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n-1} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & a_{n-1,3} & \cdots & a_{n-1,m-2} & a_{n-1,m-1} & a_{n-1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n} \cdot \begin{pmatrix} a_{n,1} & a_{n,2} & a_{n,3} & \cdots & a_{n,m-2} & a_{n,m-1} & a_{n,m} \end{pmatrix} \\ = \\ \begin{pmatrix} 0_{1} & 0_{2} & 0_{3} & \cdots & 0_{m-2} & 0_{m-1} & 0_{m} \end{pmatrix} $$ さて、ここで「ランク」の話がでてきます。
もし、この「検査行列」の「ランク」が10だったとすると、この「検査行列」のある10個の行を使ってほかの行から「足し」「引き」すると、他の行の要素を「すべて0」にすることができるのでしたよね。式で書くとこんな感じです。
$$ (検査行列のターゲットとなる行) + a \cdot (検査行列のある行その1) + b \cdot (検査行列のある行その2) + c \cdot (検査行列のある行その3) + \\ \quad d \cdot (検査行列のある行その4) + e \cdot (検査行列のある行その5) + f \cdot (検査行列のある行その6) + \\ \quad g \cdot (検査行列のある行その7) + h \cdot (検査行列のある行その8) + i \cdot (検査行列のある行その9) + \\ \quad j \cdot (検査行列のある行その10) =(要素がすべて0の行) $$ この式をじっくり見ると、「検査行列」の行を上手に11個選んで、各行に適当な数字をかけて足すと、要素がすべて0の行になるということを表していますよね。
それでは、「検査行列」の行からうまい具合に「10」個を選んで同じようなことができるでしょうか?
できないですよね。
それは、「検査行列」の「ランク」が「10」だったので、ある行を0にするためには最低10個の行が必要でした。つまり、ある行とそのほかの10個の行をあわせて、11個の行がないと要素がすべて「0」の行を作り出すことができませんでした。
ダカラドウシタ!!??
だから、カタカナで怒らないでくださいって・・・。不気味です。
ここで、もう一度先ほどの「エラー訂正機能付符号」と「検査行列」の関係を展開したものを書きますね。
$$ w_{1} \cdot \begin{pmatrix} a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \cdots & a_{1,m-2} & a_{1,m-1} & a_{1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{2} \cdot \begin{pmatrix} a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3} & \cdots & a_{2,m-2} & a_{2,m-1} & a_{2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{3} \cdot \begin{pmatrix} a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3} & \cdots & a_{3,m-2} & a_{3,m-1} & a_{3,m} \end{pmatrix} + \\ \quad \vdots \\ \quad w_{n-2} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-2,1} & a_{n-2,2} & a_{n-2,3} & \cdots & a_{n-2,m-2} & a_{n-2,m-1} & a_{n-2,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n-1} \cdot \begin{pmatrix} a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & a_{n-1,3} & \cdots & a_{n-1,m-2} & a_{n-1,m-1} & a_{n-1,m} \end{pmatrix} + \\ \quad w_{n} \cdot \begin{pmatrix} a_{n,1} & a_{n,2} & a_{n,3} & \cdots & a_{n,m-2} & a_{n,m-1} & a_{n,m} \end{pmatrix} \\ = \\ \begin{pmatrix} 0_{1} & 0_{2} & 0_{3} & \cdots & 0_{m-2} & 0_{m-1} & 0_{m} \end{pmatrix} $$ この式の右辺は要素がすべて「0」の行となっていますが、この行を作り出すために左辺の\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)のn個の数字は最低何個以上「0」以外の数字になる必要があるのでしょうか?
先ほど見てきたように、「検査行列」のランクが10なのであれば、必ず11個以上の行を組み合わせないと要素がすべて「0」の行を作ることはできませんでしたね。
つまり、\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)のうち最低11個以上は「0」以外の数字じゃないといけないのです。
おっ!?ということは??
そうです。\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)のうち、最低11個以上は0以外の数字ということは、この「エラー訂正機能付符号」の「ハミング重み」は「11以上」なのです。
言い方を変える、この「エラー訂正機能付符号」の中で最も小さいハミング重みは「11以上」になります。
ちなみに、ぴったし「11個」と言い切れないのは、11個ですべての要素が「0」の行を作ろうとすると、「検査行列」から上手にある特定の11個を選ぶように\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)を丁寧に決めなければいけません。でも、もしかしたら、その丁寧に選んだ\(w_{1}\)〜\(w_{n}\)は「エラー訂正機能付符号」として採用されてないものである可能性もあります。
例えば、「エラー訂正機能付符号」として「00」「01」「10」「11」が許されていたとしても、「今回の符号では3種類の文字しか表さないから「00」は「エラー訂正機能付符号」として採用しない」と決めることもできます。だから「11個以上」という言い方になってしまうのです。
おっ!?おっ!?そして、そして??
ノリがよくなってきましたね。
「エラー訂正機能付符号」の中で最も小さい「ハミング重」みは、その「エラー訂正機能付符号」の中での「最小距離」を表しているのでした。
ということは、つまり、この「検査行列」からできる「エラー訂正機能付符号」の「最小距離」は「11」以上ということが言えるのです!!
パンパカパーン!ついにゴールにたどり着きました!!
長い道のりでしたね。。。
検査行列のランクが「t」だとすると、最小距離「d」は「t+1」以上になることがわかりました。
今回の解説で、最小距離「d」は「t+1」以上ということがわかりましたが、次回は、最小距離「d」が○○以下になるといえるのか見ていきましょう。