検査・・。私も人間ドッグに行かなければいけません。
独極・QRコード担当の「あじな」です。
人間ドッグでされるいろんな検査が怖いというよりも、検査の結果悪いところが発見されてしまわないかが怖いです。
簡単に復習すると、「符号」化した単語に「生成行列」を「掛け算」すると、「エラー訂正機能付符号」に生まれ変わるのでした。
今回は、この生成行列とよく似た機能をもつ「検査行列」について解説します。
じゃーん!紹介お・わ・り。て・ぬ・き。
で終わると解説が楽なのですが、そういうわけにもいきませんね。順を追って説明します。
まず、「符号」があります。例えば「1,0,1」としましょう。
これに「生成行列」を「掛け算」すると、「エラー訂正機能付符号」が出来上がります。「1,0,1,1,0,1,1,0,1」みたいなものが。「符号」よりも「エラー訂正機能付符号」のほうが大きいサイズですね。
ここで、「検査行列」の登場です。この「エラー訂正機能付符号」に「検査行列」を「掛け算」します。
先ほどの例では「エラー訂正機能付符号」は「1行9列」だったので、「検査行列」は「9行p列」でないといけません。例えば、今回は次のような「9行4列」だったとしましょう。
$$ \begin{pmatrix} 2 & 3 & 4 & 1\\ -5 & 4 & 0 & 2\\ 1 & -1 & 9 & 3\\ -2 & -2 & -4 & 3\\ 2 & -2 & 0 & 2\\ 1 & -5 & -8 & 1\\ 0 & -1 & 0 & -4\\ 3 & -2 & 0 & -4\\ -2 & 6 & -1 & -4\\ \end{pmatrix} $$ 先ほどの「エラー訂正機能付符号」にこの「検査行列」を「掛け算」すると結果が「0」だけの「行列」になるというのです。
では、実際に「1,0,1,1,0,1,1,0,1」に「検査行列」を「掛け算」してみましょう。
$$ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 \end{pmatrix} \times \begin{pmatrix} 2 & 3 & 4 & 1\\ -5 & 4 & 0 & 2\\ 1 & -1 & 9 & 3\\ -2 & -2 & -4 & 3\\ 2 & -2 & 0 & 2\\ 1 & -5 & -8 & 1\\ 0 & -1 & 0 & -4\\ 3 & -2 & 0 & -4\\ -2 & 6 & -1 & -4\\ \end{pmatrix} \\ = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} $$ ほーら。「掛け算」した結果の「行列」の要素が「0」になったでしょ。
えっ?「検査行列」の意味?
ある「生成行列」から生み出された「符号」ならば「検査行列」を「掛け算」すると「0」になる。
逆に、「生成行列」から生み出された「符号」ではなければ「0」にならない「場合もある」という風に、目の前の「エラー訂正機能付符号」が「生成行列」から生み出された符号かどうかを「チェック」する機能があるので「検査行列」と呼ばれるんです。もちろん「生成行列」に対応して「検査行列」はそれぞれ違うものになりますよ。
ん??「ならない場合もある」って含みのある言い方はなんだって?まぁまぁ、もうちょっと読んでみてくださいな。
このことをイメージで解説します。
元の「符号」を「\( mathbf{w} \)」とし、生成行列を「\( mathbf{G} \)」、検査行列を「\( mathbf{H} \)」とします。
(たぶん、「\( mathbf{w} \)」はWord(単語)という意味で、「\( mathbf{G} \)」はGeneration(生成)という意味、「\( mathbf{H} \)」はcHeck(検査)という意味かな。なんで、cHeck(検査)だけ頭文字じゃないんだろう・・・)
これまでの例を文字のイメージで表すと、次のようになります。
意味は、元の「符号」に「生成行列」を「掛け算」し(この段階で、「エラー訂正機能付符号」ができます)、さらに「検査行列」をかけると「ゼロ行列」(要素がすべて0の「行列」)になるという意味です。
$$ mathbf{w} \times mathbf{G} \times mathbf{H} = mathbf{0} $$ これが成り立つような\(mathbf{H})は、次の式が成り立つように作ってあげればできますね。 $$ mathbf{G} \times mathbf{H} = mathbf{0} $$ ちなみに、mathbf{w}が「1行n列」だとすると、mathbf{G}は「n行m列」(mathbf{w}とmathbf{G}を「掛け算」して生まれる「エラー訂正機能付符号」は「1行m列」)、mathbf{H}は「m行p列」となり、すべてを「掛け算」した結果は「1行p列」になります。
「生成行列」を知らなくても「検査行列」さえ知っていれば「「検査行列」に「掛け算」した結果が「ゼロ行列」」になる「符号」が正しい「エラー訂正機能付符号」と判断することができます。
では、「生成行列」から生み出された「符号」になんらかの状況でエラーが起こって、少しだけ「符号」が変わってしまったらどうなるでしょうか?
ご想像の通り、「検査行列」を「掛け算」した結果は「ゼロ行列」にはなりません。
実は、この0にはならない要素の数字を使って、「正しい符号を推測(エラー訂正)」することができるのです。(具体的な方法はこのあといやというほど解説しますので、楽しみにしてください)
今後は、もう少し「検査行列」や「生成行列」についてみていきましょう。
独極・QRコード担当の「あじな」です。
人間ドッグでされるいろんな検査が怖いというよりも、検査の結果悪いところが発見されてしまわないかが怖いです。
これまでの復習 [表示する]
- QRコードは株式会社デンソーが作ったもので、スマホや携帯で読み取れる
- QRコードは「小さな白と黒の四角でできている」「多少汚れても大丈夫」という特徴がある
- 白黒の四角を使うのは、コンピュータにわかりやすくさせるため
- QRコードは「機能パターン」と「符号化領域」で出来上がっている
- 「機能パターン」は、「クワイエットゾーン」「位置検出パターン」「位置検出パターンの分離パターン」「タイミングパターン」「位置合わせパターン」の5種類
- 「符号化領域」は「形式情報」「型番情報」「データ領域」の3種類
- 「形式情報」は「エラー訂正レベル」と「マスクパターン参照子」で決まり、「\(4 \times 8=32\)」種類のパターンがある
- 「型番情報」は「QRコードのバージョンによって決まり、40種類ある
- 「データ領域」は「データ」と「エラー訂正情報」で出来上がる
- QRコードはバージョンが1〜40まである。一辺の大きさは、「QRコードのバージョン(1〜40)\( \times \)4\( + \)17」
- 「エラー訂正レベル」は「L(7%の汚れまで)」「M(15%の汚れまで)」「Q(25%の汚れまで)」「H(30%の汚れまで)」の4種類ある。
- 「エラー訂正レベル」が「L」だと「QRコード」で表現できるデータの量は最大で、「H」のときに最小になる。
- 「1bit」とは白・黒、1・0のような2種類の情報を表すことができる能力のことで、文字を増やすと「2bit(4種類)」「3bit(8種類)」と表現できる種類が増える
- 日常の言葉を「エンコード」して「コード(符号)」に置き換え、「コード(符号)」を「デコード」して日常の言葉に戻す
- QRコードの「エンコード」方式は「数字モード」「英数字モード」「漢字モード」「8bitモード」の4種類
- どの「エンコード」方式でも、データは「モード指示子」+「文字数指示子」+「データ」+「終端パターン」+「埋め草ビット」+「埋め草ワード」となる
- QRコードには「白」と「黒」を読み間違えても、元の情報を復元する「エラー訂正」能力が備わっている
- 「エラー訂正」は読み取れた(聞き取れた)言葉から最も近い「ありえそうな単語」を推測すること
- 「エラー訂正力が強い」ということは、「あえて使っていない単語が多い」ということと同じで、効率性は悪い
- 1,0でできている符号では「ハミング距離(2つの符号間で1と0が異なる箇所の個数)」があり、符号間で最も「ハミング距離」が小さいものを「最小距離」と呼ぶ
- 使える「単語」を制限すると「最小距離」は大きくなる
- 「最小距離」の半分までのエラーであれば訂正することができる
- 「単語」を「符号化」したものに、適当な「1」や「0」を後ろにつけると「最小距離」が大きい「エラー訂正機能付符号」になる
- 「エラー訂正機能付符号」を作る際は「符号」に「行列(生成行列)」を掛け算する。
- 「QRコード」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれる方法で「エラー訂正機能付符号」を作る
- 「行列」は数字を並べただけのもので、もともとは「連立方程式」の係数だけ抜き取ってならべたもの
- 「行列」の「足し算」「引き算」は各「行列」の要素同士を「足し算」「引き算」したもの
- 「行列」の「掛け算」は、左の「行列」から「行」を取り出し、右の「行列」から「列」を取り出して、それぞれの要素を掛け算して足し合わせる
- 左の「行列」の大きさが「a行b列」で、右の「行列」の大きさが「b行c列」だった時、「掛け算」結果の行列は「a行c列」になる
- 「行列」の「掛け算」は順番を変えると結果も変わる
- 「掛け算」しても結果を変えない行列を「単位行列」と呼び、「掛け算」すると結果が「単位行列」になる行列を「逆行列」と呼ぶ
- 「行列」の特徴を表している「数字」を「行列式」と呼ぶ。「行列式」は「正方行列」だけが持っている
- 「並び替え」は「置換」によってい表すことができ、偶数回の「置換」でできる「並び替え」を「遇置換」、奇数回の「置換」でできる「並び替え」を「奇置換」という
- 「行列式」は各列から数字を選択し「掛け算」し、符号をつけた(「遇置換→(+)」「奇置換→(-)」たものを全ての選択パターンで足し合わせる。
- 「列」で計算しても、「行」で計算しても結果は同じ
- 「全てが0の列」、もしくは、「すべてが0の行」があれば「行列式」は「0」
- 「列」を入れ替えたら「行列式」の符号が変わる。「行」を入れ替えても「行列式」の符号が変わる。
- 全く同じ「行」が2個以上あれば「行列式」は「0」。全く同じ「列」が2個以上あっても「行列式」は「0」
- ある「行列」の「行列式」は、その「行列」の1つの「列」(もしくは「行」)を2つに分割して、2つの「行列」の「行列式」の「足し算」にすることができる
- ある「行」に違う「行」を「足し引き」しても、「行列式」の結果は変わらない。ある「列」に違う「列」を「足し引き」しても、「行列式」の結果は変わらない。
- ある「行(もしくは列)」を「定数倍」した「行列」の「行列式」は、「定数倍」する前の「行列」の「行列式」に定数をかけたものと同じ
- 2つの「行列」を「掛け算」した結果の「行列」の「行列式」と、それぞれの「行列」の「行列式」を「掛け算」した結果は同じ((\ \left| \mathb{A} \times \mathb{B} \right| = \left| \mathb{A} \right| \times \left| \mathb{B} \right| \))
- 「連立方程式」の係数を抜き出した「行列」の「行列式」の値が「0」になるということは、元の「連立方程式」が「不良設定問題」である
- 「逆行列」は「正方行列」かつ「行列式」の値が「0」でない「行列」だけに存在する
- 「\((-1)^{(i+j)} \times (元の行列からi行目とj列目を取り去った行列) \)」を「余因子行列」と呼ぶ
- 「行列式」は「余因子展開」を使うと、1サイズ小さい「行列」の「行列式」の「足し算」に展開することができる
- 「逆行列」は「(元の「行列」の「行列式」の逆数)\(\times\)(x行・y列目の要素が<元の行列のy行・x列目を取り除いた「余因子行列」の「行列式」>となる「行列」)」
- 「階段行列」は上の行から、左側(0の部分を除きます)を1にして、その行より下の行の左側が0になるように適当な数字をかけて足し算・引き算するというのを繰り返して作る
- 「ランク」はその「行列」の中の独立した行(または列)の数で、「連立方程式」の係数を「行列」にした場合、未知数の数より「ランク」が低ければ「不良設定問題」となる
- 「符号」のサイズが1行n列、「エラー訂正付符号」のサイズが1行m列のとき、「生成行列」はn行m列になる
- 「QRコード」で利用される「エラー訂正機能付符号」は「リード・ソロモン符号」と呼ばれるもの
「生成行列」のライバル!「検査行列」
これまで、「生成行列」を解説してきました。簡単に復習すると、「符号」化した単語に「生成行列」を「掛け算」すると、「エラー訂正機能付符号」に生まれ変わるのでした。
今回は、この生成行列とよく似た機能をもつ「検査行列」について解説します。
検査行列とは
「生成行列」によって生み出された「エラー訂正機能付符号」に「掛け算」すると、その結果の要素がすべて「0」になるような「行列」を「検査行列」といいます。じゃーん!紹介お・わ・り。て・ぬ・き。
で終わると解説が楽なのですが、そういうわけにもいきませんね。順を追って説明します。
まず、「符号」があります。例えば「1,0,1」としましょう。
これに「生成行列」を「掛け算」すると、「エラー訂正機能付符号」が出来上がります。「1,0,1,1,0,1,1,0,1」みたいなものが。「符号」よりも「エラー訂正機能付符号」のほうが大きいサイズですね。
ここで、「検査行列」の登場です。この「エラー訂正機能付符号」に「検査行列」を「掛け算」します。
先ほどの例では「エラー訂正機能付符号」は「1行9列」だったので、「検査行列」は「9行p列」でないといけません。例えば、今回は次のような「9行4列」だったとしましょう。
$$ \begin{pmatrix} 2 & 3 & 4 & 1\\ -5 & 4 & 0 & 2\\ 1 & -1 & 9 & 3\\ -2 & -2 & -4 & 3\\ 2 & -2 & 0 & 2\\ 1 & -5 & -8 & 1\\ 0 & -1 & 0 & -4\\ 3 & -2 & 0 & -4\\ -2 & 6 & -1 & -4\\ \end{pmatrix} $$ 先ほどの「エラー訂正機能付符号」にこの「検査行列」を「掛け算」すると結果が「0」だけの「行列」になるというのです。
では、実際に「1,0,1,1,0,1,1,0,1」に「検査行列」を「掛け算」してみましょう。
$$ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 & 1 & 0 & 1 \end{pmatrix} \times \begin{pmatrix} 2 & 3 & 4 & 1\\ -5 & 4 & 0 & 2\\ 1 & -1 & 9 & 3\\ -2 & -2 & -4 & 3\\ 2 & -2 & 0 & 2\\ 1 & -5 & -8 & 1\\ 0 & -1 & 0 & -4\\ 3 & -2 & 0 & -4\\ -2 & 6 & -1 & -4\\ \end{pmatrix} \\ = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} $$ ほーら。「掛け算」した結果の「行列」の要素が「0」になったでしょ。
えっ?「検査行列」の意味?
ある「生成行列」から生み出された「符号」ならば「検査行列」を「掛け算」すると「0」になる。
逆に、「生成行列」から生み出された「符号」ではなければ「0」にならない「場合もある」という風に、目の前の「エラー訂正機能付符号」が「生成行列」から生み出された符号かどうかを「チェック」する機能があるので「検査行列」と呼ばれるんです。もちろん「生成行列」に対応して「検査行列」はそれぞれ違うものになりますよ。
ん??「ならない場合もある」って含みのある言い方はなんだって?まぁまぁ、もうちょっと読んでみてくださいな。
なんで「検査行列」を「掛け算」した結果の「行列」の要素はすべて「0」になるの?
それは、つまり、そうなるように検査行列を作ってるからです・・・。身も蓋もない解説ですみません。このことをイメージで解説します。
元の「符号」を「\( mathbf{w} \)」とし、生成行列を「\( mathbf{G} \)」、検査行列を「\( mathbf{H} \)」とします。
(たぶん、「\( mathbf{w} \)」はWord(単語)という意味で、「\( mathbf{G} \)」はGeneration(生成)という意味、「\( mathbf{H} \)」はcHeck(検査)という意味かな。なんで、cHeck(検査)だけ頭文字じゃないんだろう・・・)
これまでの例を文字のイメージで表すと、次のようになります。
意味は、元の「符号」に「生成行列」を「掛け算」し(この段階で、「エラー訂正機能付符号」ができます)、さらに「検査行列」をかけると「ゼロ行列」(要素がすべて0の「行列」)になるという意味です。
$$ mathbf{w} \times mathbf{G} \times mathbf{H} = mathbf{0} $$ これが成り立つような\(mathbf{H})は、次の式が成り立つように作ってあげればできますね。 $$ mathbf{G} \times mathbf{H} = mathbf{0} $$ ちなみに、mathbf{w}が「1行n列」だとすると、mathbf{G}は「n行m列」(mathbf{w}とmathbf{G}を「掛け算」して生まれる「エラー訂正機能付符号」は「1行m列」)、mathbf{H}は「m行p列」となり、すべてを「掛け算」した結果は「1行p列」になります。
んで、「検査行列」はなんのために使うのよ?
先ほどちらっと解説したように、読み取った「符号」が「正しい「符号」かどうか(「生成行列」から生み出された「符号」かどうか )」を判断するために使われます。「生成行列」を知らなくても「検査行列」さえ知っていれば「「検査行列」に「掛け算」した結果が「ゼロ行列」」になる「符号」が正しい「エラー訂正機能付符号」と判断することができます。
では、「生成行列」から生み出された「符号」になんらかの状況でエラーが起こって、少しだけ「符号」が変わってしまったらどうなるでしょうか?
ご想像の通り、「検査行列」を「掛け算」した結果は「ゼロ行列」にはなりません。
実は、この0にはならない要素の数字を使って、「正しい符号を推測(エラー訂正)」することができるのです。(具体的な方法はこのあといやというほど解説しますので、楽しみにしてください)
今後は、もう少し「検査行列」や「生成行列」についてみていきましょう。